いわしはだいだい昼寝をしている

まとまりもとりとめもない脳内爆発日記

東洋経済の「入社難易度ランキング」を見て思うこと

ちょっと前に東洋経済が出した「入社難易度ランキング」が話題になっている.取り組み自体は大変興味深いが,ランキングの作成方法やランクインしている会社が不可思議なことになっている.

算出方法は次の通りだ.

今年の各大学・学部の難易度について、医学部と歯学部を除いて平均した値を各大学の難易度とする。仮に、A社の就職者が東京大学5人、慶應義塾大学3人、上智大学3人だったとする。東京大学の学部平均難易度は67.8で、全大学で最も高い値だ。慶應義塾大学は65.5、上智大学は61.7になる。
ではA社の平均入社難易度を求めてみよう。(東京大学67.8×5人+慶應義塾大学65.5×3人+上智大学61.7×3人)÷(5人+3人+3人)=65.509≒65.5になる。この値をA社の「入社難易度」としている。
就職判明者が10人以上の企業に絞り、ランキングにしたのが、「入社が難しい有名企業ランキング」だ。もちろん採用者すべての出身大学が判明しているわけではない。しかし、企業の採用総数が分かっている企業に占める、大学別就職者の判明率は85%に上る。同率で順位が異なるのは小数点第2位以下の差による。

以下にざっと読んで思いついた不思議な点を書き,このランキングがあんまり意味ないんじゃないの?ということを言いたい.

・大学入試の時の偏差値は必ずしも企業入社のインデックスにはなり得ない

・もし大学の偏差値で企業への入社難易度が近似できるならその根拠は何か示す必要があるはず
・何となく直感的に「そうだよね」を狙っているならかなり悪質
・そもそも大学院生はどういう風に扱っているのか?
・大学院って偏差値ないのでは?

・有名企業は結構海外卒取っているけど,その点はどう扱っているのかが不明


・知っている限りの個人的な話になるが,ランキング1位の三菱商事は毎年キャンパスリクルーティングしていて,5〜10パーセントくらいは海外大卒の新卒がいるはず
三井物産富士フイルムもよく海外のキャリアフォーラムにきている
三菱地所も去年ロンドンでやっていた

・内定をもらったけど行かない人もいっぱいいるので,実際に入社した人だけで難易度求めるのがよくわからない

・分析対象の416社の選定のせいでそもそもランキングがあまり意味をなしてない.

記事では計算方法についてこう正当化している:

難関大学かどうかの評価は、やはり大学受験時の難易度がもとになっているだろう。そこで駿台予備学校の協力を得て、同予備校の模試の難易度を使用、さらに大学通信が各大学へのアンケート調査から得られた有名企業416社への就職者数と合わせ、入社難易度を算出した。この416社は、日経平均株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定している。

・めっちゃ優秀な人は外資コンサルや銀行に行きがちな気がする(経験)
・僕がB○Gでインターンしてた時の8割の他の学生は東大だった
・周りの話を聞いていても,コンサルなら例えばMBBとカーニーやローランドベルガーStrategy&などに行ってしまう
・これにHSBCとかゴールドマンとか色々入ってくる
・そしてBIG4(KPMG, PwC, EY, Deloitte)も忘れてはいけない

1つ例を出すと,日系戦略コンサルで「ドリームインキュベータ 」という会社がある.コンサルを目指す就活生にとても人気な会社だ.そこの公式HPによると過去の14年の採用者はこんな感じらしい.

東京大学27名、京都大学5名、慶應義塾大学5名、東京工業大学3名、早稲田大学1名、一橋大学1名、カリフォルニア大学バークレー校1名

この不可思議な記事曰く,東大の偏差値は67.8で,慶応は65.5である.他の大学の偏差値を調べるのがめんどくさいので以下のように仮定し計算する.

大学 偏差値 人数
・東大 67.8*27
・京大 67*5
・一橋 66*1
東工大 66*3
・慶応 65.5*5
・早稲田 65.5*1
バークレー 70*1

計算結果はだいたい67で,三菱商事に約3も差をつけて圧倒的大差で1位に躍り出る.

結局何が言いたいかというと,アンケートが得られなかった会社(主に外資)をこのランキングに組み込むと,この絵は様変わりする可能性が極めて高く,このランキングはこのランキングを作った人が決めたルールの上で描いた現実の模写以上でもないし,以下でもない

こういう記事が出ると学生の周りでこれが流れ始めて,無駄に就活の競争感を煽ることになって個人的にはよくないと思う.特に海外大生にとって,今頃はボストンキャリアフォーラムの時期で毎日面接を受けて一喜一憂したくないのにしてしまう時期である.「彼は受かったのに僕は落ちた」みたいな巻き込まれるのも傍迷惑な競争に巻き込むような記事はやめてほしいし,本当にやりたいことよりもランキングで上の会社を選ぶ謎の空気を形成することになりかねない