いわしはだいだい昼寝をしている

まとまりもとりとめもない脳内爆発日記

イギリス留学完全マニュアル(3)

この記事は(3)です.

(1)はこちら:

iwashidayo.hatenablog.com

(2)はこちら:

iwashidayo.hatenablog.com

パーソナルステートメントに書くべきこと

お待たせしました。ここではパーソナルステートメントに書くべきことを紹介します。

まず第一に、当たり前ですが、出願先が求めている内容を書いてください。これはなぜか忘れ去られがちですが、非常に大切です。例えば、ある大学ではアカデミックイントレスト(どんな細分化された専攻の中の領域に興味があるか?)のみについて書いてください、と指示がありました。が、しかし私の友人がパーソナルステートメントを書き、それを添削した時びっくりしてしまいました。なぜなら、私が見たパーソナルステートメントにはそれに関することが一切なく、なぜか生い立ちから将来こんな職場で働きたい!的な内容が書いてありました。 

例えば、「私は学部時代にアフリカでインターンをして貧困を目で見て確認しました。なので貧困解消のためDevelopment Studiesを学ぶ必要があります」みたいなことを書く人はとても多いです。この文章はそれほど悪くありません。むしろなぜその学問に興味を持ったかが書いてあり、理解しやすいです。しかし、これは「書き手の論理のみ」で書かれたいわば自己満足的な文章だと思います。応募する大学の募集要項が「なぜその学問に対して興味を抱いたか」書きなさいと支持しているのであれば、二重丸のパーソナルステートメントでしょうが、そんなことはレアケースです。

ここで僕が言いたいのは、相手が求めてることを答えられないようなパーソナルステートメントでははっきり言って落ちるということです。だって指示守れてないじゃないですか。まず、大学が求めていることを募集要項から読み取り、それを箇条書きにでもして、自分が書いたステートメントにそれが含まれているかをしっかり確認しましょう。これが第一歩です。

二番目に、なぜ多くの応募者の中から、あなたが合格しなければならないのか、大学にどんなメリットがあるのか、どう貢献できるのか、などを足してみましょう。あなたがその大学に行く必要があるのはわかります。だって応募しているのだから。では、大学はなぜあなたを取らなければならないのでしょう?確かに、イギリスの大学はヨーロッパ人以外の学費は高いので、大学にはあなたを取るインセンティブがありますが、それはみんな同じです。なので、なぜ自分か?の問いにうまく答えることが大切です。またこの観点をあなたのパーソナルステートメントは当然ですが、前述のレジュメやCVに盛り込んでください。矛盾をきたすようなことがあったら確実に落ちますので、練りに練って考えることが肝要です。就職活動の際によく言われる「自己分析」のようなものをより広い視野(なぜ自分がそれをやりたい/やらなくてはいけないのか、に加えてなぜ応募先の大学があなたを取る必要があるかまで)で行なってください。これは大学に入った後の、エッセイや修士論文にも同じことがいえます。

第三に、あなたにとって大学院はどういう位置づけですか?何のために大学院に行く必要がありますか?。この点をしっかり書きましょう。自分以外の人に納得してもらえる理由づけがとても大切です。この点に関しては、大学院留学という安くない目標を抱いているわけですから、当然家族や友人にその決断について話す機会があると思います。そこの部分を自分の中で詰められてから文字に起こしましょう。

そして最後に、英語にこだわりましょう。どんなにいいこと書いていたとしても間抜けな日本語の文章だったら読むのをやめてしまうか、「なんやねんこいつ」ってなりますよね?その点に留意しましょう。私が出願した頃(2016年)だと、留学エージェント(beoやSIUK)は無料の英語の添削サービスを提供していたと思います。ただ、確か内容は見てくれないので注意です。

お金に余裕がある人は、お金払ってでも添削してもらったほうがいいのではないでしょうか?繰り返しになりますが、あなたが審査官だとした時に、ヘンテコな言葉のパーソナルステートメントに高評価をつけますか?答えは自ずとわかると思います。

コラム:LSEでの勉強

ロンドンスクールオブエコノミクス(LSE)は英国・ロンドンにある社会科学に特化した大学です。社会科学に特化しているということもあり、社会科学とは関係が薄い理系学部は一切ありません(社会科学に必要な統計や数学を研究する学部は存在します)。大変残念なことに、日本ではあまり知名度がありませんが、ロンドンスクールオブエコノミクス(LSE)はQS Social Science World Ranking(世界大学ランキング・社会科学部門)ではハーバード大学に次ぐ世界2位と評価され、オックスフォード大学やケンブリッジ大学を凌駕しています。

LSEで学ぶ日本人

イギリスの大学では、基本的に9月に新学期が始まります。2017年9月に始まった2017-2018アカデミックイヤーにおいては、学部生14人、修士または博士課程に在学する日本人は78人、合計92人の日本人がロンドンスクールオブエコノミクスで勉学に励んでいます。 

Graduate Level (=修士課程または博士課程)に在籍する学生は多様なバックグラウンドを持っています。筆者は日本の国公立大学を卒業後、直接ロンドンスクールオブエコノミクスの修士課程に進学しました。筆者のようなケースがある一方で、社会人を経験し、学び直すために修士課程に進学する方や、企業や官庁から派遣され、勉学に励まれている方もいらっしゃいます。年齢や学んでいる内容などバラバラで、多種多様なバックグラウンドではありますが、それぞれ想いを持ち留学している仲間として、同じ学校で机を並べ時には議論をすることで知見を広めることができ、修士課程とは言え、アカデミアに身を置く者としては大変良い環境です。

LSEでのマスター生活

ロンドンスクールオブエコノミクスでの修士課程は大きく、4つのステージ(Michaelmas Term, Lent Term, Summer Term、修士論文)に分けることができます。日本の大学の学期制とさほど大きな違いがあるわけではありませんが、ここではその3つのステージを説明します。

基本的にはSummer Termを除く1学期に3〜4つの授業を履修し、どの学期も11週(1週間のReading Week(読書週間)を含む)で構成されています。Reading WeekはMichaelmas Term, Lent Termの6週目を指します。この週は、ほとんどの授業が行われない代わりに、読んで字のごとくリーディングや復習をしなければなりません。また、Formative Essay(採点がされないエッセイ)の締め切りなどがこの週に設定されていて、授業はないけれども、勉強/研究をしなければいけません。

Michaelmas Termは日本でいう1学期(9月から12月)に当たり、Lent Termは2学期(1月から3月), Summer Termは3学期(4月から6月)と構成されています。しかし、Summer Termには復習を除くほとんどの授業がなく、主にテスト期間と言えるでしょう。

修士論文の提出締切は所属する学部によって異なりますが、基本的にはSummer Term後の8月中旬から後半に設定されています。

つまり、ロンドンスクールオブエコノミクスでの修士課程は基本的に6つの授業を9月から3月の間に履修し、4月から6月のSummer Termでのテストに備え、その合間に修士論文の準備をし、Summer Term後に本腰を入れて8月中旬から後半の提出に備えて本腰を入れて書くという形になります。日本やアメリカの大学院とは異なり、英国の修士課程は1年間で修了することができる分、スケジュールに余裕があまりないのが特徴です。

クリティカルシンキング力を養う授業

日本の大学の仕組みとは異なり、英国の多くの大学の授業は主に、レクチャーとセミナーで構成されています。レクチャーはいわゆる日本的な講義で、多いときは数百人が出席します。簡単に想像できますが、学生の数が多いのでレクチャーだけでは能動的な学習ができません。そこで少人数のセミナーの出番です。セミナーは多くても15人で1グループになるので、積極的な議論が前提として求められています。課題の論文を数本読み込み、それを元に議論を進め、理解を深めるのがセミナーの目的です。くれぐれも他の出席者を論破するのが目的ではありません。

筆者がLSEで履修したセミナーで最も記憶に残っているものは。MY400 Fundamentals of Social Science Research Design(社会科学の研究デザイン)です。この授業では毎週レクチャーのためのリーディングに加え、3〜4本の社会科学の論文を読み込みあらかじめ用意された質問に答え、セミナーに準備します。以下のような問題が10問ほどリスト化されていて、各々の答えをセミナーで議論する形になります。

 

What are the central research questions of these studies? Think both about relatively narrow versions of the research questions and the broader motivating questions that the authors start with. (主要な研究課題は何か?)

 

This paper includes several studies, studies 2-4 are already further research with respect to study 1. Are there different scenarios, experiments or study designs that would build further on these? (この論文はいくつかの研究を含んでいる。他に良い研究手法や研究デザインがなかっただろうか?)

 実際に学会誌に投稿されている最先端の論文を批判的に読み込み、改良できる部分を探し、それをセミナーで議論する。この一連のエクササイズを通し、LSEは所属する学生に批判的な思考(クリティカルシンキング)能力を鍛えることを期待しているのでしょう。

研究デザイン以外の授業でも、このような本質を問うタイプの質問がLSEでは頻繁に質問されます。地理学系の都市計画の授業のセミナーで質問された、What is justice?(正義とは何か?)や、What is Human Geography(人文地理学って何か?)は今でも筆者の頭に強く焼きついています。

繰り返しになりますが、LSEは社会科学に特化している大学であるので、リテラチャーレビュー(先行研究批判や文献精読)による修士論文よりも、それらを含んだ実証研究による修士論文を推薦している節があります。よって、自分で問いを立てて、それに応える道筋を理解し、研究をデザインし、遂行する能力が強く求められています。つまり、研究に対する主体性がなければ、論文を書くことが大変難しい環境です。

一方で、サポートは大変手厚いです。指導教授によるオフィスアワーはもちろんこと、指導教授以外の指導も望めば受けられますし、Methodology Surgery(研究方法についてのレクチャーセッション)も毎週用意されていています。LSEは研究に対して強い意欲を持っている人に対しては、大変好ましい大学となっています。