いわしはだいだい昼寝をしている

まとまりもとりとめもない脳内爆発日記

銀座でハンバーグ食べたこと以外は何もあっていない文章、あるいは駄文

文章力向上ということで、村上春樹っぽく日記を書いてみたいと思う。気が向いたら、という制約付きではあるけれど。


世の中には特別な種類のものがある。あるいは、僕らが勝手に特別だと思い込んでいるものがある。


ある土曜日の昼、僕らはある1つの特別なことを除いて、特に用もなく銀座までやってきた - それは、ハンバーグを食べると言うことだ。


「ハンバーグなんでどこにでもあるんじゃないかな?」と僕はいささかの猜疑心を言葉の隅々に散りばめなが、丁寧に言葉を発した。


「ごもっともよ、一般的なハンバーグなら、世界のどこでも食べらるわ。たとえ、サハラ砂漠でも、インカの遺跡でもね。でもね、ある種の特別なハンバーグは、ある種の特別なレストランでしかいただけないのよ。」


彼女は、ハンバーグの専門家のように-そんなものが実際にあるのかどうかはここでは関係ないが-ゆっくり、そしてはっきりと言った。


「ある種の特別なレストラン、特別なハンバーグ。それ一体どういうものなのかな?僕にもわかる言葉で、説明するして欲しい。いや、説明する義務があるように思うんだ。」


まるで、イタズラ心でとても大きな蜂の巣を棒で突っついてしまった子供のように、僕はこの質問をした事を後悔した。彼女には悪い癖がある。一度話し始めると、彼女は話す事を気がすむまで辞めないのだ。それはまるで大きなダムが決壊し、黒い物体と化した水が物理法則に則り、とめどなくすごい勢いで大きな音とともに流れ出ることを惹起させる。


彼女は彼女が経験したハンバーグにまつわる不思議な旅-彼女はそれを、ハンバーグの喪失、あるいはハンバーグにまつわる彼女の吸引力が引き起こした特別な問題- について話し始めた。


「それはだいぶ前、つまり1Q84年にある国の国境の南側にある、海辺の小さなカフカというところで起きたの。その時はちょうど、ある種の必要性、あるいは必然性のせいで、3人の友達と羊をめぐる冒険に出かけていたの。その途中で私たちはカフカに寄ったのよ。」


「なるほど。僕にはそのある種の必然性というものが実感として理解できないでいるけれど、それはとても興奮する旅だったんだろうね。」


「その通りよ。とても興奮する旅だった。」


「そして君はカフカという町で、ハンバーグを喪失したんだね?」


「そうよ。その通りよ。でもね、話を急がないで。私たちはいつもあくせく働き、結論を常に最初に話すように躾けられてきたけれど、時にはプロセス、つまり順番が大切になる時があるのよ。そのことを決して忘れないでちょうだい、話が聞きたいならね。でも、話を聞きたくなければ、別よ。その時は結論をすぐに求めてもいいのよ。」


僕はあるべきように抜けないことがわかっているのに、横着をしてコルクを抜き、やはり上手に抜けなかった時のことを思い出していた。それはちょうど、この時の感じに似ていた。


「悪かったよ。それで次にどんなことが起きたんだい?」


僕たちはハンバーグを注文することも忘れ、店内にはベートーヴェン交響曲第七番 イ長調 作品92:3が流れ、交差点には人が溢れ、時計はいつものように時間を刻んでいた。


僕は一定のリズムで、はじめに頼んだほうじ茶ラテの氷をストローでつついていた。僕はこの時、ハンバーグの喪失の物語が僕にもある種の喪失、あるいは吸引力がもたらす奇妙な物語の中心に迷い込むことなら全く気づいていなかった。


早くハンバーグ食べたいな。