いわしはだいだい昼寝をしている

まとまりもとりとめもない脳内爆発日記

「ヤバい経済学」に似ている本: その数学が戦略を決める

 データ分析の本を読んだ

僕は昔,データサイエンティスト(とは言っても名ばかり)としてインターンしていたことがあって一時期データについての本を読み漁っていた.今回はそんな時に読んでた数あるうちの1冊のをご紹介.

 

「ヤバい経済学」に似ている本.著者同士は友人関係らしい.「ヤバい経済学」が好きであれば間違いなくこの本も好きであろう.

 

いいところ

・たくさんの実例をもってして,データの面白さを語りかけてくる.例えば:

- ワインの質は回帰分析で表せる.しかもなかなか的確
「ワインの質=12.145+0.00117*冬の降雨+0.0614*育成期平均気温-0.00386*収穫期降雨」

- レンタカー会社や保険会社は,クレジットカードの返済実績の低い人々にサービスを拒否している.データマイニングによれば,辺塞実績の低い人は事故も起こしやすいからだ.

- 最近ではフライトがキャンセルされると,航空会社は別便の空席を提供するときに常連客を飛ばして,データマイニングで他社に乗り換えそうだと判断された顧客に提供する.

- 実はクレジットカードのVISAは,カードでの購入履歴をもとに離婚確率を予測しているのだ.もちろんこうなると話はオーウェル的になる.税務署から,あなたはもうじき離婚しそうですよ,なんて言われたくない人も多いだろう.

 

・直感はデータベースに負けた
- 裸眼は,選手の評価に必要なものを見抜くには不十分なのだ.ちょっと考えればわかる.見ているだけでは,三割打者と二割七・五分との打者との差なんかわかるわけがない.これは2週間に1本のヒットの差でしかない.

 

・ 懐の痛みを調べるカジノ
バーバラはウォルマートの入社試験を受けて,「どんな会社にも一匹狼の居場所はある」という命題に「はい」と答えたのが間違いだったと知らされて唖然としたと言う.でも回帰分析によれば,ウォルマートが一匹狼向きだと思う人は,この職場に馴染めず,辞める傾向が高いのだ.

 

・巻末の参考文献がかなり充実しているので,何かを深く知りたいときに重宝する.
ほとんどの参考文献が(当然だが)英語なので,そこにはご留意を.

 

・統計技術を褒める一方で,しっかりその弱点も指摘している
例えば,著者はしっかりと「データ集合が小さければ,いくら回帰分析をしたところで,あまり正確な予測はできない」としっかり僕らに釘を刺している.

 

・「第8章 直感と専門性の未来 まとめ」ではかなりいいことを言っている
「絶対計算の進展につれて,一般人も統計や数学の知識が必須となる.平均値と標準偏差の考え方くらいは必須.単に知るだけではなくて,自分の経験や直感と統計分析(絶対計算)を相互参照できることが重要」と筆者は我々に強く訴えている.マーケターの方々や心理学を勉強されている方々には当たり前かもしれないが,例えば,2SDの意味を答えられる人はどれくらいいるでしょうか?簡単だけど重要なことを筆者は教えてくれると思います.

 

・ポイントがまとめとして章末に乗っているので理解しやすい

 

悪いところ


・英語を日本語に訳した文章にありがちだが,話が冗長
このくらい話が長いと,章末の「まとめ」だけでことが足りるのではないか,と思ってしまう.少しデータの勉強をした方や,ちょっとこのテーマについてかじってみたい方は図書館や本屋でまずは「まとめ」だけ立ち読んで見ることをオススメする.

・欧米チックな皮肉が多い
「理解しないことで給料をもらっている人に,それを理解させるのは難しい」などと言ったことがじゃんじゃん書いてあります.

 

結論

分量が多いですが,読んで見る価値のある示唆に富んでいる面白い本です.